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Yasunori Sugahara

-「やすのり伝記」-


第十四回
冷たい目

 東京っこのいじめは、これで終わることはなかった。その当時、お昼休みになると、「めちゃぶつけ」というボール遊びが流行っていた。次から次へとボールを渡しっこして誰かに最後はぶつけるという遊びだ。

 これが、なんとも残酷だった。次から次へとボールを渡しては、僕に目がけてぶつけてくるのだ。それも、ほっぺたや、おでこなど、痛いところを狙ってくる。どこに逃げても次々にボールを渡して追いかけてくるのだから、逃げ場がない。子供心に本当に悔しい思いをした。

 それから、なんだか愚痴っぽい話になってしまうけれど、田舎から来た少年に対する都会っこの意地悪い遊びは、本当なのだからしかたがない。所詮、純粋に見える子供の世界にもやはり残酷な一面があるのだ。

 それは、学芸会の時だった。やっぱり僕は、主役に選ばれてしまった。そして、子供達だけで練習をしようということになって、友達の家に集まった。その子のお兄さんが指導してくれるということで、僕がセリフを言った。僕の役は主役の鹿だった。水辺に来て「あー、のどが乾いた」と言うのだが、その「のど」という言葉のアクセントがおかしいというのだ。確かに、茨城弁のアクセントと標準語は違う。僕は何度も涙を浮かべながら、のどをくり返した。すると、ついにこのお兄さんは、僕のほっぺたをつねりあげた。「何回言ったらできるんだ!」僕は、悔し涙を流してじっと我慢した。

 今でも、そんな子供達を恨んではいないけど、田舎から来た子供をいじめたり、貧しいからといって差別したり、そんな人間には無性に腹がたつ。僕の家は引揚者のうえ、事業に失敗して上京してきたのだから、確かに裕福ではなかった。そうした裕福ではない子供に対する冷たい目は、子供に限らず、先生にまで確かにあった。担任の先生は、お金持ちの子供のお母さんから届け物をもらい、その子達ばかりを目に見えてかわいがっていた。子供心に大人の心の醜さも少なからず感じた。自分はああいう大人にはなりたくない。

続く......

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