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Yasunori Sugahara

-「やすのり伝記」-


第二十回
あっ!この子だ!

 思い出せば、水戸から上京して東京大森の小学校でいろんなことがあったっけ。つらいこともあったけれど、おもしろい話もいろいろある。大森の入新井第四小学校に転入してはじめての音楽の時間だった。みんなで「お山の熊さん」の合唱をしていると、突然、先生が立ち上がった。「ちょっとやめて!」そう叫ぶと先生が生徒の席を一人一人をのぞきこむように歩き始めた。「さぁ、もう一回歌って」。子供達は再び、一斉に歌い始めた。「お〜いわこいわをほりかえし〜♪おやまのくまさんみちぶしん〜♪うんこらさ〜それやっこらさ〜♪」

 「あっ!この子だ!この子!この子.....」先生は僕を指さして叫び始めた。僕は驚いてしまった。「菅原君ね。さぁ、立ちなさい。」僕はわけもわからず立ち上がった。すると、先生はそのまま僕の手を引いて職員室へと小走りに走っていった。そして、そこにいる先生方に向かってまた叫んだ。「みなさん!ちょっとこの子の歌を聞いてください!」そして、僕にまた「お山の熊さん」を歌うように促した。ちょっと恥ずかしかったけれど、僕はしっかりと「お山の熊さん」を歌った。今の時代にこんなことがあるだろうか。昔は本当にのどかだった。

 僕が歌い終わると職員室にいた先生方もうれしそうに拍手をしてくれた。それにしても、50人以上もいるクラスの子供達の中でどうして僕の声がわかったんだろう。そのころの話だと、僕の声はまるで天上の鈴を転がすようなそれはそれはきれいな声だったそうだ。やっぱり、なにか歌の役目を持って生まれてきたのかもしれない。余談だが、中学時代に男の子は変声期を迎える。この時、どんな声に変わるのか正直いって心配だった。もう、あの鈴を転がすような声は出ないけれど、それなりに変声期を乗り切ってよかったと思っている。

続く......

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