3月13日(木)「死んだら星になる」

 先週は、春の嵐が吹き荒れたり、なんだか穏やかな春というよりはちょっとドラマティックな春でした(笑)この嵐の向こうに穏やかな春が待っているのでしょう。夜、なんとなく散歩がしたくなって外に出ました。不思議なほど星がよく見える夜でした。この頃、東京でも星がよく見えるようになりました。浜離宮では、ボラの大群が話題になったり、むしろ、東京に大自然が戻ってきているのは確かなようです。ベランダのヒヨドリやメジロの数も日ごとに増えているようです。やはり、人間は大自然とともに生きる生物なのですね。

 ところで、不況の中、上野や池袋、横浜、新宿......。いたるところでホームレスの人々の数が激増してきているのを知っていますか?この寒空の中でどんな気持ちで毎日を暮らしているのでしょうか。それぞれに人生の事情を抱えているのでしょう。これ以上、国の政策が無責任になっていけばいつ誰がどこでホームレスになるか予断がつかない現実です。今、ホームレス生活に陥っている人でも子供の頃には、まさか自分の人生がそんな運命になるとは考えもしなかったはずです。

 僕の初期の作品で「この空に生きる」という曲があります。この曲は当時、ホームレス生活を送っていた1人の男性が日比谷公園の野外コンサートに飛び入りで歌った歌です。「どこまでも、どこまでも、この空に生きていく。泣いたらだめだよ笑ってごらん。いつか心に幸せがくるから♪」不思議に心に突き刺さるメロディとこの歌詞は、今でも多くの人々の心の歌となっています。この歌を作った男性は中学の時にお父さんが死に、それを恨んでグレてしまい、いつの間にかホームレス生活に陥ったそうです。ところが、日比谷公園で寝泊まりしているうちに凍死していく仲間を見て、厳寒の野外で寝る恐ろしさを知りました。自分もいつ命を落とすかもしれない。そんな恐怖に襲われたそうです。そして、親を失う人間は自分だけでないのに、他人を恨み、こうしてグレて生きてきた自分を後悔したのです。それでも、時間は元に戻ることはありません。今のこの姿が自分の現実の姿なのです。

 ある日、彼は死の恐怖に怯えながら、あることに気がつきました。それは人間は死んだら星になるということです。ちょっと聞くと理解できないかもしれませんが、この感覚こそ今、私たち人間が一番忘れてはいけないことだったのです。彼は、いつもこの苦しい現実から逃れて夜空に輝く星になりたいと願っていました。そして、いつか実はこの地球こそ他の星から見れば宇宙に輝く星そのものであることに気がついたのです。あらゆる生き物は命を終えると土に帰る。そう、地球そのものになるのです。そして、星として永遠に輝き続けているのです。決して、遠い星に行かなくてもそのまま自分自身が星だったのです。もちろん、生きている僕たちに星なのです。遠い星に逃げることを考えるよりも今、こうして星として輝いている命を大切にしたい。彼はしみじみそう思ったそうです。「この空に生きる」この歌は、きっと永遠の人生のテーマソングとして輝き続けることでしょう。

 


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