第二回「カンボジアで」

 タイの首都バンコクへ降り立った私達3人はむせ返るような匂いと暑さの中、宿舎のホテルへと向かいました。何も知らずに、珍しそうに町を眺めるゆうたのあどけない姿を見ているとこれからの過酷な難民キャンプの旅に果たしてたえられるのかと、不安がよぎりました。

 今回は、日本赤十字社の当時、外事課長だった近衛忠輝さんの努力でタイ、赤十字社が全面協力してくれることになっていたのですが、一向にホテルに向かいの車が到着しません。やはり、日本にくらべると何もかもがのんびりと進んでいるようです。
私達は難民の子供達にプレゼントする楽器を買いに町に出かけました。町は大変な人ごみです。中心街にあるデパートのおもちゃと楽器が売っているフロアに着くと、ゆうたは目を輝かせていろいろなおもちゃを振り回して喜んでいます。

 おもしろい事に、そのフロアで突然、日本の童謡の「汽車ぽっぽ」が流れました。
タイの人にとって日本の歌はちょうど日本人がアメリカの歌を聞くようなもので、自然にデパートに響きわたります。すると、ゆうたが身ぶり手ぶりで「ぽっぽぽっぽ」と歌いながらフロアをかけ回っています。そのあまりのかわいらしさと楽しさにみるみる多くのタイ人がゆうたを取り囲み、目を丸くして拍手を送っています。その拍手に応えて、何回も何回も駆け回るゆうたを見ていると、頼もしくなってきました。
ひょっとしたら、このおもちゃ売り場がB-DASHゆうたの初舞台かもしれません。

 数日後、タイ赤十字社の車がホテルに到着。
私達は、バンコクから何百キロも離れたジャングルの中にある、カオランキャンプに旅立ちました。ワゴン車の荷台と屋上には、あふれるほどの楽器が積み込まれています。渋谷のハチ公前で、協力してくれたひとりひとりの善意の募金が楽器のプレゼントとなって今、タイのジャングルを走り続けています。車内は40℃を越す熱気。さすがのゆうたも汗だらけで、ぐったりしています。がんばれゆうた。

 


………禁無断転載………