第五回「国連本部でのコンサート」

 カンボジア難民キャンプから、帰国した私にまた思いもかけない大きな出合いが訪れました。1980年。国連が世界障害者年をスタートさせ、ユネスコやユニセフを中心に世界キャンペーンをはじめました。日本にもニューヨーク本部から、マイケル・クラーク代表が来日。ユネスコを基盤に精力的な活動を展開していました。私も難民キャンプのコンサート等の御縁からユネスコに依頼されて、東京で講演コンサートを催す事になりました。平和への願いをこめて、歌い続けたあと、私は地球歌の日について、語りはじめました。「世界平和が叫ばれながらも現実の地球上では争いが絶えません。」私は話しながらあのカンボジアのあどけない子供達の顔が思い出され、胸が痛みました。「本当に、本当に、 現実なんです」。叫びたい気持ちでした。「今、人間と人間が、人種や国境を超えて 手をつなぎあえるとすれば、それは歌です。どんな国のどんな人たちにも歌があります。せめて、一年で一日でも、世界中の人々が、戦いや憎しみを忘れて歌いあえる事ができたら......

 そう毎年、8月8日を地球歌のい日として提唱したいと思います。8月6日が広島。8月9日は長崎被爆。この8月に平和への祈りをこめて地球歌の日を提案したいのです。8は命の環。人間とこの地球上に生きるものたちが供にいのちの歌を歌いあうのです。21世紀にはきっと通信衛星で結ばれる時が来るでしょう。」コンサート終了後マイケル・クラーク代表が、目を輝かせてわたしにかけよってきました。「I DREAM」(夢見ています)という私の言葉をさえぎってマイケル代表は力強く私の目を見つめて「You will achieve」(あなたは実現する)と言い切りました。achieve。実現!この言葉を私は一生忘れる事はないでしょう。

それまでの私は何ごとも夢を追う気持ちで取り組んでいました。けれども実現させるという気持ちにはそれ覚悟が伴います。夢を見る事はだれにも勝手にできます。実現させる事はまったく意識が異なるのです。私がその後、アフリカやアラスカそして、南極、日本武道館等、どんなに苦しくても夢で終わらせず、achieveさせる事ができたのは、この一言のおかげだったかもしれません。マイケル代表は続けました。「Mr.sugaharaあなたはニューヨークの国連本部でコンサートを催す気はありませんか?」「え?私が?」あのニューヨーク国連本部で.......?

 


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