第十三回「ゆうたアメリカへ飛ぶ」

 テレビ東京の看板番組スーパーテレビに出演が決まった翌日、僕はテレビ東京のプロデューサーに会いました。とにかく、一時間番組を5本制作するという事は想像もつきません。1時間番組一本でも大変な労力です。それが月曜日から金曜日まで連日5本です。

 ゆうたは1年生になっていましたので、はじめての夏休みがアメリカ夢大陸横断という事になってしまいました。ゆうたもそうたもほとんど、その意味をわかっていません。ただ、毎日はしゃいで過ごしているだけです。学校の先生に相談すると、担任の先生は大変喜んでくれて「それはゆうたちゃん本人のためにもとってもいい経験ですね。それに私達の学校からそんな子供が出るなんてそれもうれしいです。放送を楽しみにしていますよ。」と大歓迎してくれました。ゆうたは、幸せな子供です。そうやって先生にまで暖かい目で見守られていたのですから。

 夏休み1ヶ月の間に一時間番組が5本。つまり、一週間に1本になります。出発までは、そのすごさはわかりませんでしたが、アメリカに着くとそれがどれほど過酷なスケジュールだったか、はじめて気がつきました。それでも、どんな困難に対してもすがはら一家は笑顔で立ち向かってがんばりました。

 ちょうどその頃、ゆうたとそうたは健康のため空手道場に通っていました。また、ジャッキーチェンの人気が絶大な時期で、プロジェクトAをはじめ、二人ともあらゆるアクション映画を見まくっていましたので、ニューヨークの飛行場に着くなり、空港ロビーで空手ごっこを繰り広げました。なにしろ、幼い日本の少年がおもしろおかしく、空港ロビーで戦うのですから、アメリカ人にとってはおもしろくてたまりません。さらに、その年、「KARATE KID」という映画がアメリカ本土で大ヒットしていたから、その人気は想像を絶するものがありました。まるで、映画から抜け出てきたように見えたのでしょう。巨大なアメリカ人達が小さな二人を取り囲んで大喜びしています。その光景を見ながらこの旅は苦しいけれどもきっと楽しい旅になるような気がしてきました。ゆうた、そうたがんばれ.....

 

 


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