第二十回「サンタさんからのプレゼント」

 ゆうたは、とても純粋でなんでもすぐ信じる素直な子供でした。小さい頃、ピーターパンの映画を見てから空を飛ぶ事に憧れました。二回のベランダに立ってそこから、空に飛び出そうと妄想しています。私がゆうたちゃんに「空を飛べるのは、金の粉のおかげなんだよ。体に金の粉を振り掛けると自由に空を飛べるんだ」そういうと真剣に目を輝かせています。その日から、ゆうたは金の粉に夢中になってしまいました。「パパ、金の粉はどこで買えるの?いつ買ってきてくれるの?」ある日の事、ついに買い物に出かけた時、金の粉を買う事になってしまいました。僕は本当に困ってしまいました。そこで、とっさに考えた事は休業しているお店を訪ね「ゆうたちゃん、今日はせっかく来たけど、金の粉屋さんは休みだよ」ゆうたはがっかりしてうつむきました。しばらく、元気がありません。どれほど金の粉を楽しみにしていたのでしょう。サンタクロースもそうでした。

 保育園の頃から、サンタクロースを信じ続けていました。「サンタさん来るかな?」クリスマスの時期が来るといつも楽しみにしていました。小学校に入って、他の子供達がサンタクロースを信じなくなっても、ゆうたの心の中にはいつも本物のサンタクロースがいました。小学校6年生になった時、僕はもうサンタさんもここまでと思い、最後のプレゼントを選ぶ事にしました。それが、ギターだったのです。それまでのゆうたは、ほとんど音楽に関心を示さず体操クラブに通ったり(だから今でもバック転が得意ですよ)外で暴れまわっていたのですが、そろそろ.....と考えてお茶の水の楽器店街の下倉楽器でギターとアンプを買いました。クリスマスイブの夜、こっそりとゆうたの枕元にギターとアンプを置きましたが、それを見てゆうたがどんな反応を示すか楽しみでした。正直なところ、僕が歌手なのにしかも、あれほど音楽の環境があるのに、小学校に入ってからどうして歌に興味を示さなくなってしまったのか、不思議だったのです。朝、目がさめたゆうたは本物のギターに驚いていました。夜、さりげなくギターの得意なスタッフの大間君を家に招いてゆうたに優しいギターのコードを教えてもらいました。こんな時に親はいないほうがいいものです。僕は外に出ていました。果たしてゆうたはギターを弾くのでしょうか。もちろん、今B-DASHのボーカリスト兼ギタリストとしてステージに立っているのですから、ギターが弾けるようになった事は言うまでもありません。今のゆうたをミュージシャンにした恩人は実はサンタさんだったのです。

 

 


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