第二十七回「ゆうた、21世紀劇場の舞台に立つ」

 思いもかけぬ、出会いから北京に飛んだゆうた。素人のゆうたが突然、あの21世紀劇場の大舞台で歌うのです。それも一人で。しかも、そのステージは中国全土に生中継されるというのです。劇場には酒井法子をはじめ、アジアのトップアーティスト達も次々と楽屋入りします。少年の部は12億の中国人民の中から選ばれたそれこそトップ10の人々です。第一部がコンテスト、第二部がプロ歌手の歌の採点。なにしろ、中国の歴史はじまって以来、はじめてのコンテストでそれの優勝者は国家が保証した大スターへの道が約束されるのです。中国には全部で各地に10のテレビ局があり、それぞれにひとりづつ、そのテレビ局でのグランプリ優勝者が10人。21世紀劇場に集められました。どれほど、大きなコンテストかはわかると思います。次々に見事な歌を自信満々に歌う出場者達、いよいよゆうたの出番です。

歌うのはオリジナル曲の「通学路」。この歌は僕がなにげなく書いた詩にゆうたが曲をつけたものですが、ちょっと珍しい曲なので詩だけ紹介しましょう。

 

通学路

君はあの頃、夢を見てたね 
僕もあの頃、夢を追いかけてた
そして二人 無邪気にじゃれあって
帰った通学路「君は夢を捨てる」と言った....

いつのまにか時は流れ、君は君の道を
いつのまにか時は流れ、僕は僕の道を

君はあれから何をしてたの? 
僕はあれから、夢を追いかけてた
そして一人 木枯らし吹く冬の街
訪ねた通学路 ふいに君の姿見つけた......

いつのまにか時は流れ、君は君の道を
いつのまにか時は流れ、僕は僕の道を

君はあれから愛に傷つき
夢を探してここに戻ってきた
そして二人 無邪気にじゃれあって
あの日の通学路、君は「夢に生きる」と言った....

いつのまにか時は流れ、君は君の道を
いつのまにか時は流れ、僕は僕の道を

いつのまにか時は流れ、君は君の道を
いつのまにか時は流れ、君と僕の道を

 黒い綿パンに真っ白いYシャツ。なんと首には電気のコードをかっこよく巻き付けてゆうたがスポットライトの中に姿をあらわすと、一瞬、舞台が輝くのを感じました。

「え!あれがゆうた!?」今まで、横にいたゆうたとは別人のゆうたがそこにいます。
一番、二番と歌い次いでいくうちに会場からは、熱い視線と感動の嵐が巻き起こります。

「中国人にゆうたの歌がこんなに言葉を越えて伝わっている」
僕は夢を見ているような気持ちでした。

三番まで歌い切ると、ゆうたは堂々とおじぎをして舞台のそでへと消えていきました。僕の胸ははち切れそうです。酒井法子の歌も終わり、いよいよ結果の発表です。

 


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