第四十一回「命のルーツ」

 いろいろな事のあったアフリカの難民キャンプでした。もちろん、大人の僕達もいろいろな出会いに驚いたり、感動したりの毎日でしたが、小学校2年のゆうたにとってはどんな日々だったのでしょう。東京で街頭募金をしたり、キャラバンコンサートをしたり、たくさんの困難を家族で乗り越えていくうちにゆうたもたくましく成長していったような気がします。なにしろ、体中でアフリカの大地や音楽を体験できたのだから。きっと、ゆうたの人生において、すばらしい財産ができたのではないかと思います。どんなにお金や物を残すよりも、子供達には豊かな心とすばらしい思いでを伝えていきたい。本当にそう思います。いよいよ、帰国の日が近付いてきました。

 難民を助ける会の人達の提案でアフリカの古代遺跡をたずねる事にしました。エジプトのピラミッドはよく知られていますが、アフリカのこんなところにまで、古代遺跡があるなんて人間はすごいと思いました。車で広い道をどこまでもどこまでも走っていくと、石積みの不思議な建造物が出てきました。「あれは一体なんですか?」「あれが現地の人の古代遺跡なのです。」最近の学説では、人間はアフリカから生まれて進化し、世界中に広がったとされています。きっと、エジプトよりももっともっと古い歴史があるのでしょう。けれども、それは、今となっては記録もなく、わからないのが現状です。古代遺跡の石畳を歩いていると、歴史のそのまたはるかかなたの時代を思いました。そして、はるか遠くの日本まで、こうして人間の文化の道が続いている事が、不思議に思われてきました。

古代遺跡に飛び乗ってうれしそうに遊ぶゆうたちゃん

 ゆうたは、ただ無邪気に石の上で遊んでいます。ゆうたにとっては、この古代遺跡さえも大自然の一部なのです。照りつける太陽の下で恐らく、歴史上はじめてであろう日本の子供がここで遊んでいる事も妙にうれしい光景でした。それにしても、幸せに生きていた現地の人達が西洋人の進出の中で奴隷として世界中に売られていったという事実はやはり、悲惨な事です。この遺跡で幸せに暮らしていた時代に思いをはせました。もう、時代を戻す事はできないけれど、アフリカの人々の手で、新しいアフリカの時代を築いていく事を願わずにはいられませんでした。このアフリカの国々には難民問題ばかりでなく、厳しい未来が待っています。ゆうたと楽しく遊んだあの難民キャンプの子供達のためにも、私達一家もできるだけの努力をしていきたいと思いました。

道路ぞいの市場に集まった人々にゆうたちゃんも不思議な顔

 

 

 


………禁無断転載………