第四十五回「時の流れ」

 小学校の6年の時にサンタさんからのプレゼントとして、思いもかけずもらったギター。そのギターからゆうたの音楽人生がはじまりました。もし、あの時サンタさんからギターのプレゼントがなかったら、ゆうたの人生はどうだったのだろう、と思うと感無量です。そう、人生なんてちょっとした出会いや、ひょっとした一言で大きく変わってしまうものなのです。僕も、そういえばゆうたの年頃の頃に忘れられない不思議な一言があります。それは、もう遠い記憶のかなたの思いでですが.....

 ちょうど、僕がゆうたの年頃の時、テレビで素人のど自慢の番組が全盛でした。番組の名前は「歌のグランプリショー」今は亡き、ロイ・ジェームスの司会で毎週日曜日の午前11時から12時まで。チャンネルは4、日本テレビでした。その後、この歌のグリンプリショーは衣替えをして、萩本欽一司会の「スター誕生」になるのですが、その番組からは山口百恵、森昌子、岩崎宏美等、たくさんのスターが生まれています。「歌のグランプリショー」というのは、タレントスカウトではなく、本当の歌の実力を競い合う番組で幅広い年代の出場者が毎週11人ずつ歌い、その日の最高得点者とそれまでのチャンピオンが最後に競い合うのです。友達がハガキを出してくれ、一緒に予選に行ったのですが、あまりの応募者の多さに圧倒されてしまいました。友達は全員落ちてしまい、僕一人がテレビに出る事になってしまいました。今、思えば生意気な学生ですね。なにしろ、22歳のくせにあのスタンダード曲「慕情」を歌ったのですから。ところが、驚いた事に11人の出場者中とんでもない高得点で挑戦者に選ばれてしまったのです。しかも、チャンピオンまで圧倒してしまいました。なんと、司会者が言うには来週は島根県民会館からお届けします。「え!?島根?」驚く間もなく、僕は島根へと連れていかれました。それから、毎週、毎週チャンピオン。おかげで学校を休み過ぎて危ないところでした。なにしろ、僕は学生なんだから。ずいぶん多くのスカウト会社から連絡が来ましたが、まさか自分が歌手になるなんて思いもしませんでした。全部断ってまた普通の学生生活を続けたのですが、ある日大森駅でその番組のプロデューサーにバッタリ会ってしまったのです。その時、言われた言葉が「あれ?すがはら君、まだ歌手になってなかったの?」。「え!?僕が歌手に?」でも、不思議です。なんだか胸が急にドキドキしてしまったのです。

僕が歌手?僕が歌手?僕が歌手?

その時の気持ちは今でも忘れません。結局、学問を優先して大学院に進んだのですが、今思えばやっぱりこうして歌手になっている自分を見るとなんだかあの一言にひきずられるように人生が過ぎてきたような気もします。どこかにあの一言が眠り続けていたのかもしれません。ゆうたは、最初からギターを片手に音楽人生をはじめましたが、これからどんな一言に出会うのでしょうか?

あなたにとって人生の一言とはなんですか?

 

 


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