|
7月26日
今日は姉がバスケットの県大会で朝早く行ったので、そのあとのかたずけをしてから二階で勉強をしていた。突然、玄関が開く音と共に「おや?だれもいないのかな」。と言う父の伸び伸びとした大きな声が響いて来た。三人姉弟暮らしの私たちにとって、こういう伸び伸びとした大きな父の声は大きな勇気を与えてくれるのだ。それに、今日は真理子も来たに違いない。「おかえりなさーい」と階段を転げるように下りてゆくと四年の律が帽子をとり、黒い顔から白い歯を光らせながら笑っていた。「まりちゃん、まりちゃんは?」私は大好きなかわいい真理子に会いたくてならない。まだ二ヶ月にもならないのに私を忘れてしまってはいないだろうか。どんな言葉で私の所へ来るのだろうか。
それは私が毎日思い続けてきたことだ。
父がにこにこしながら「真理ちゃーん。妙ちゃんいるよー」と外に怒鳴ると、真理子がサンダルを踊らせ、ただ私の体を目的に一目散に走ってきた。
「たいちゃん!」赤いリンゴのようなほうに透き通るような肌の真理ちゃんが、そう言った時、私はすでに真理子を抱いていた。涙がぼろぼろ流れ、頭がどくどくし、顔がほてって何も見えなくなってしまった。なぜなぜこう興奮してしまうのだろう。私の心は嬉しくてならないのだ。四歳の真理子が一つも重く感じられない。桃の木から真っ赤に熟した大きな桃を二つ取ってむいてやった。何という桃の赤さ、人間の愛が満ちている様なしたたる様に甘く柔らかい桃の実。それを口につける真理子の顔を見ると、嬉しくならなかった。それから付属に東京から来たという事を電話で知らせた。深作さんが遊びに来たのでみんなで桃を食べてかた水場(那珂川)へ行った。真理子は大喜びで私の背中にすぐついたり足をバタバタさせて泳いだり、深い所に連れて行っておぶって泳いだりすると一段の大喜びである。せいせいする水色の水のなかで、真理子と共に大暴れしてしまった。水は暖かだ。夜八時頃、船で向こう岸に運んでもらい、家に帰ってきた。夕方、姉が大福を買って帰ってきた。お腹がすいていたのでとてもおいしかった。「まりたん夜しか母たんのおっぱい飲まないもの、えらいでと、今日はたいたんと寝ようね」と張り切っていた真理子に夜泣かれ、うちわで仰いでいるのが大変だった。
|