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Yasunori Sugahara

-「やすのり伝記」-


第四十四回
みんな作り物?

 船で太平洋を横断していると、いろいろなことに気づきました。時々、イルカが船に着いて泳いできたり、トビウオがそれこそ何百メートルも跳ね飛んだり、それは壮大で楽しい日々でした。一番感動的だったのは、夜、遠くの波間にひとつの星がキラキラと浮いたり沈んだり輝いていたのですが、いつの間にかその星がだんだん大きくなってきたのです。それは不思議な風景でした。そして、結局、それは星ではなく、はるか沖合の暗闇からこちらに進んでくる船の明かりだったのです。その明かりの移動を見ているとまさしく地球が円形であることを肌で感じました。それに気がつくと満点の星に囲まれて円形の地球に横たわっている自分がとてもロマンティックに思えました。このまま、宇宙を静かに旅していたい気持ちがしてきました。なーんだ宇宙旅行なんて結局、今、こうやって実現しちゃっているんだ。そんな嬉しい気持ちがわき上がってきました。

 まもなく、僕はとても大事なことに気がつきました。東京にいる時は、電信柱やビルなどのすべてが絶対的な風景であると思っていたのですが、こうして太平洋を旅していると本来、この地球は無限の大地でそこに人間がいろいろなものを作っていったことに気がつきました。絶対的だと思っていたエジプトのピラミッドでさえも5000年前にさかのぼれば誰かが築造したものであり、その前はナイルの大草原だったのです。そう考えると「絶対」と考えていたものもどこかでこの世に存在しはじめたものであることに気がつきました。

 それに気がつくとそれを作ったのはすべて人間である以上、人間の意志でそれを変えることができることを知りました。歴史でさえ絶対だと思ってたいろいろな事実が誰かにかかれた記録であることを知りました。不思議な感覚ですが、巨大な「絶対」に向かって自分は無力だと考える気持ちが消え、どんなことでも時間をかけてひとつひとつ努力を続けていけば必ず少しづつ変わるということを信じられる自分になれたのです。これは、生きるうえでとても大きな発見でした。僕がどんな大きな夢も決して焦らず、あきらめず毎日少しづつでもコツコツ努力できる人間になれたのは、この時の発見が大きいような気がします。

続く......

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