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Yasunori Sugahara

-「やすのり伝記」-


第四十五回
夢のサンフランシスコ物語

 サンフランシスコの明かりが見え始めたのは、ちょうど明け方直前だった。うっすらと暗闇の中にまるで宝石箱のようにサンフランシスコの街が見えてきた。知られているようにサンフランシスコは、坂の街である。だから、海から陸を見てもその坂に沿って建物が建てられているため、まるでその丘がシャンデリアのように美しく輝いてみえるのだ。そして、手前には超高層のビル、ビル、ビル。その建物がまた、夢のように美しい。はじめてのアメリカ大陸。僕の胸はときめいた。どんなドラマが待っているのだろうか。まず、その夜の夢のサンフランシスコ物語をご紹介しよう。

 その夜、僕は名前は忘れたけれど、サンフランシスコのとある豪華なホテルのロビーにした。美しい坂道のサンフランシスコを散策した後、ゆっくりとホテルのロビーに座っていたのだ。とにかく、お金がない(笑)ただで、過ごせること、それが絶対条件だ。ふと、ロビーの中央を見ると驚いたことに日本のお祭りの御輿が飾られていた。「へぇ〜...アメリカにもこんなものが届いているんだ。そうだ、この街は日系二世の人も多いし、きっと日本に関心があるに違いない。」僕はそう思った。それにしても、豪華なホテルのロビーに飾られていると日本の祭りの御輿もまんざらではない。すると、いかにも上品そうな夫婦がロビーに入ってきた。そして、御輿の前に立っている僕に英語で話しかけてきた。「What's this?」僕は、たいした英語ではなかったけれど、一応、英語で日本のお祭りの話や、御輿の話をした。すると、夫婦は目を輝かせて御神輿の細かい部分を真剣に見始めた。どうやら、日本の文化の美しさにそうとう感動しているらしい。よく聞くとその夫婦は子供と食事を済ませたあと、こうして子供を置いて二人で一時間もかかる別の街からサンフランシスコにミュージカルを見にきた帰りだという。なんとおしゃれな話だろう。なんとすてきな夫婦だろう。僕は感動した。すると、二人が僕に説明のお礼に自分たちの車で夜のサンフランシスコを案内してくれるという。これもまた夢のような話だ。僕は思わずほっぺたをつねりたくなった。

 夫婦の車は真っ赤なスポーツカー。屋根なしだ。こんなすてきな車はミュージカルでしか見たことがない。笑顔でエスコートすると二人は上機嫌でサンフランシスコの街を走り出した。「夢だ。夢だ。夢だ。」僕は何度も自分に言い聞かせたけれど、夢ではなかった。小高いサンフランシスコの丘に車を止めてまたしばらくはなした。僕が歌が得意なのを知るとこの丘の上で僕に歌うように勧めた。僕は「思いでのサンフランシスコ」を歌った。こんなに気持ちよく、「思いでのサンフランシスコ」を歌えたのははじめてだった。二人は仲良く手をつなぎ、顔を見合わせて「なんてうまいんでしょう。」という顔で聞いている。歌い終わるとすぐに二人は感激して、僕にアメリカで歌手活動をすることを勧めてきた。「まさか、そんな。」でも、うれしかった。また、夜更けのサンフランシスコを赤いスポーツカーは走り出した。

続く......

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